人を動かすもの

WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の決勝が行われ、日本代表「侍ジャパン」が接戦の末、3対2でアメリカに勝ち、世界一となりました! 前日のメキシコ戦といい、しびれるような緊迫感のある試合を戦い抜いて、勝利をもぎ取ってきた闘いぶりには本当すごいものがありましたね。

 

日本チームの個々人の技術力の高さや選手層の厚さはもちろんありますが、そういった数字で表せるもの以外に「メンタル面でのチーム力の高さ」が今回非常に高かったのが優勝の要因ではないかと感じました。相手に先行されたり、不調の選手がいたりしても、誰かが必ず苦しい状況を打開する働きをしてくれる。そんな強さがありましたよね。

 

 

厳しい状況に追い込まれても、決してくじけない。そういった強さは一体どこからくるのでしょう?

 

 

個人個人が一瞬一瞬に集中力をもってプレーする。その上で、自分以外の人のチカラを信じ応援する。更に加えて、ちょっとしたきっかけをみんなで好転へと押し広げる空気を作っていく。そんな空気が常にあるから、逆境でもくじけず頑張れる・・・ということなのだろうと思います。

 

これが、「個人個人が一瞬一瞬に集中力をもってプレーする」という最初の要素だけだと、上手くいく・いかないは「個人の責任」になってプレッシャーにしかなりません。これでは、チームの人数分だけ個人が集まった「足し算」の状態。個人主義・能力主義の組織はこのような状態にあると言えるかもしれませんね。

 

では、個人の「足し算」ではなく、「掛け算」でチームが構成されるようになるにはどうしたらいいのでしょう?

 

「掛け算」となるからには、お互いへの「働きかけ」が必要です。「働きかけ」とは、すなわち「心理的な交流」。今回のWBC侍ジャパンのチームで言えば、「他者への愛」「楽しさの共有」「苦しいときの鼓舞」。この3つの要素が段階的に表れて、チームが熟成していったのではないかと私は思います。

 

 

それでは3つを具体的に見ていきましょう。

 

最初の「他者への愛」は、チームの立ち上がり期。

最年長でそうそうたる実績をもつダルビッシュ選手が早期に合流して、後輩たちへの「育成的な愛」をもってチームにまとまりをもたらしました。

 

ついで、本戦に入ってヌートバー選手がフルタイム全力プレーでファンを沸かせたこと。

全力で躍動するエキサイティングな姿が、それを見る人の本能を刺激し、「野球の醍醐味、楽しさ」のスイッチが入りました。

 

最後に、決勝トーナメントに進んでからの「苦しいときの鼓舞」。

普段、ジェントルマンな感じの大谷選手が、熱くチームを鼓舞して底力を引き出しました。

 

 

こうして一連の流れでWBCを振り返ると、人はセオリーや緻密な戦略で動くのではなく、大まかな筋立てと熱量(愛・楽しさ・鼓舞)によって自律的に動くものなんだなと改めて感じました。

 

当然、選手起用にはセオリーや緻密な計算はあるかと思いますが、栗山監督には更に大谷選手やダルビッシュ選手の起用法に見られる「メモリアルな物語性」、準決勝での山本由伸選手の2番手起用に見られる「絶対勝つことへのメッセージ性」といったWBC全体を通しての大きなストーリー性があったように思います。

 

選手・ファンともにハラハラ・ドキドキしたWBC。

世界一に向かって、みんなの気持ちがひとつになって動いた楽しい春の球宴でした。

 

侍ジャパン、優勝おめでとうございます!!!