いま組織にブランド戦略が必要なわけ

「ブランド」というと高級品を思い浮かべる方も多いかと思いますが、購入する人がそこに特別な価値を見出していれば、安くてもそれは「ブランド」です。

 

安い価格帯でメジャーブランドと言えば「コカ・コーラ」が教科書的によく挙げられますが、「みんなで盛り上がる場に似合うソフトドリンク」「楽しさ」「ハッピー」「笑顔」「赤いカラー」など様々なイメージ連想が広がって、他にはない存在感を持っています。だから、私たちの意識の中では「多くの飲み物の中で区別された独特の価値を持っているもの」として認識されています。多くの商品が出ては消え、出ては消えていく中で、非炭酸系が主流となった今でも一定の飲用機会を持っているのはすごいことですよね。

 

 

「ブランド」は、企業自身が「他とは違うぜ!」と言っただけでは成立しません。

買う人が「これには他では得られない価値があるよね」と認めたときに初めて成立します。

 

そうした「特有の価値」が広く人々の意識に根付くには、広告をはじめとする様々な事業活動が、継続的に世の中の人々に触れられるように情報化・体験化されるようになっていなければなりません。なおかつ、それは一本筋の通ったものである必要があります。チグハグなことをやっていては、人によって印象が大きく異なってしまいます。それでは「みんなが認める特有の価値」とはなりませんよね。

 

でも、この「一本筋を通す」というのがなかなか難しい。

 

企業組織には人事異動があるので、人が変われば考え方も変わってしまうからです。

また、時代も不確実で不安定で、変化を求めてきます。

 

一本筋を通す「不変」的なところと、時代に合わせた「変化」のバランスをどうとるのかは非常に難しいところです。正解もないと思います。

 

では、どうしたらいいのか?

 

そこは、やはり試行錯誤。

でもそれは、むやみに時代変化を追うことではありません。

 

そこには、ブランドとしてもつ「普遍的な価値観」のフィルターを通して時代を眺めた時に何ができるか、という内発的な意志と柔軟な発想、行動への勇気が必要となってきます。

 

「普遍的な価値観」を持つには、それを明文化し共有する作業が必要です。

 

そこで明文化された「普遍的な価値観」をどう行動に転換していくのか。それが事業活動となります。そして、それが継続していくと「文化」になります。

 

 

異動はもちろん、転職なども常態化して、人が流動化する時代になりました。

DXと旧来の商慣習の併存で、顧客体験も分散しています。

そんなバラバラとした環境で、「一本筋の通った特有の価値」を積み上げていくのは簡単ではありません。

 

でも、スターバックスのように「価値観」に立脚して企業カルチャーを育て、世の中の人々の心にブランドを築き続けるところもあります。あるいは、星野リゾートのように経営者が率先してブランド構築を実践している企業もあります。

 

世の中の人々が喜ぶものを構想し、それを生み出すために社員一同が熱意を注ぐ。

そんな動きの原動力が「普遍的な価値観」を共有する「ブランド発想の事業活動・組織運営」だと私は考えています。

 

いま効率化で何かそぎ落とされ過ぎていると感じたら、「ブランド発想」を注入するときかもしれません。