各地で「コロナ以前のお祭りのにぎわいが復活」というニュースをよく聞くようになりましたね。
お神輿を担ぐ人たちの一心不乱な表情。
見物人たちのお神輿に注がれる熱い視線と歓声。
辺り一帯がエネルギーに満ち溢れて、すごいですよね。
大勢の人の心をわしづかみにする「お祭り」。
一体何が人を「お祭り」に惹きつけるのでしょうか?
今の世の中のありようから、ちょっと考えてみたいと思います。
現代社会は経済、とりわけ効率性や生産性にフォーカスされて、その責任が個人評価に帰結する大きな構図があります。そして往々にして「理想的な成功が手に入る」という前提でものごとが計画され、でも実際は貧弱な現実とのギャップが大きくて、その達成に責任感の強い個人がストレスを抱えて苦しんでしまう・・・。そして周囲の誰もが個々人で抱える責任とプレッシャーで助け合う余裕がない。そんな状況、あなたの近くにもあったりしませんか?
「理想を目指す」というのはとてもいいのですが、それが「与えられた理想」で、なおかつ現実とあまりにも乖離した「必達目標」となってしまうと、どうやっても上手くいかないイメージしか湧いてきません。
このとき人が陥っているのが「証明マインド」。
「成果を出すことで自分の能力を証明すること」に意識がフォーカスしている状態。
成果を出さなければ、自分は能力がないという証明になってしまうので、何としても結果を出さなければと焦ります。
そんなプレッシャーが、自分を縛り、柔軟な考えもとれなくなります。
おまけに自分で何とかしなければと思うので、他人に頼ることもできなくなってしまいます。
これでは、ただただ辛いだけとなってしまいますよね。
こうした状況になりやすい組織には、「失敗を許さない空気」があります。
そして「アメとムチ」で人をコントロールして、チームを個人評価で分断していきます。
私もこれまでいろいろと経験をしてきましたが、売上が拡大したり、取り組みが上手くいくときは、必ず「チームに結束力が感じられるとき」と言って間違いありません。
結束力が感じられるチームとはどのような状態かというと、何を言っても大丈夫な「心理的安全性」があり、自分たち自身が目指したいと思う「内発的なビジョンを共有」している状態。
私は、このようなチームづくりこそが「ブランディング」だと考えています。
それは実際に「花王の食器用洗剤キュキュット」や「キッコーマンのうちのごはん」などのブランド戦略の一翼を担って、体感してきたことでもあります。
内的な結束から発して外的な成功へ。
WBCの侍ジャパンやサッカーの森保ジャパンなどをみても、チーム力が結果に与える影響は大きいのだと思います。
さて、ここで再び冒頭のお祭りの話。
当然ですが、お祭りは「お神輿をA地点からB地点に効率的に運ぶこと」ではありません。
そこから熱狂的なエネルギーは湧いてきませんよね。笑
お祭りは、地域のみんなが心の底で求める「所属意識の充足による安心感・一体感・高揚感」の具現化。
集団で暮らす社会的動物である私たちが「現実化して手応えを感じたいビジョンのひとつ」と言えるでしょう。
お神輿を担ぐ人、熱い視線と歓声で応援する人、みんなが一体となって瞬間瞬間を創り出していくプロセス全体がお祭りです。
そこには特定のヒーローは不在。
無名の個人が集まって、一体となって「自分たちが見たい景色」を生み出していきます。
その結果、そこから発せられるエネルギーを感じたくて、地域外の人たちまでやってきます。
グローバル化が進んで、個人主義がすっかり浸透しました。
でも個人主義で抜け落ちてしまうものもある。
それが意外とエネルギーを生み出す大事なものなのかもしれませんね。